受け口(下顎前突)とは
下顎前突とは、下の前歯や下あご全体が前方に突出している状態を指します。一般的には「受け口」とも呼ばれます。「下顎骨の過成長」や「上顎骨の劣成長」など、骨格性の要因によるものと、歯の傾きの異常による歯槽性の要因によるものがあります。
横から見ると、下あごや下唇が前方に出ているため、顔貌に審美的不良を感じることがあります。口を閉じたときに上唇が引っ込み、下唇が前に出ることで、いわゆる「しゃくれた」ような印象になることがあります。また、発音時に発音しづらくなることもあります。咬み合わせの面では、上下の前歯が反対に咬み合う「反対咬合」となり、前歯で食べ物をかみ切りにくい、奥歯への負担が大きくなる、顎関節に負担がかかるなど、機能的な影響も生じます。
診断は前歯の咬み合わせの関係(オーバージェット)や骨格的なズレ(ANB角)によって行われます。正常では上の前歯が下の前歯より約2〜3mm前方にありますが、これが0mm以下、すなわち下の前歯が上の前歯より前に出ている場合、下顎前突と診断されます。正確な診断には、頭部X線規格写真(セファロ写真)による診査、分析が必要です。上顎と下顎の位置関係、下顎の成長方向などを評価し、骨格性か歯槽性かを判定します。歯のズレ(オーバージェット)と骨のズレ(ANB角)の程度により症状が異なります。
軽度下顎前突
- 歯のズレ:0~−2mm程度
- 骨のズレ(ANB角):0~−1°程度
中等度下顎前突
- 歯のズレ:−3~−5mm程度
- 骨のズレ(ANB角):−1~−3°程度
重度下顎前突
- 歯のズレ:−6mm以上
- 骨のズレ(ANB角):−3°以上
受け口の主な原因
下顎前突の原因は、骨格的な要因と歯列の不正の2つに大別されます。
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下顎の骨が過剰に発達している
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上顎の骨の成長が不十分である
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遺伝的要素が関係していることもある
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下の前歯が前方に傾いて生えている
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上の前歯が後方に倒れて生えている
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舌を下または前方に押し出す癖(舌突出癖)がある
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鼻づまりや口呼吸、頬や唇の筋肉のアンバランスによる影響
受け口によるリスクや悩み
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見た目のコンプレックス
下あごが前に出ていることで「しゃくれて見える」「口元が出ている」など、顔の印象にコンプレックスを感じることがあります。
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発音のしづらさ
前歯の位置関係が逆になるため、「さ行」「た行」「な行」などの発音が不明瞭になりやすく、特に子どもの場合は発音訓練が必要になることもあります。
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咬み合わせの不調や顎関節症のリスクが上がる
前歯で食べ物をかみ切りにくい、奥歯への負担が大きくなる、顎関節に負担がかかるなど、機能的な問題を引き起こします。
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歯や歯茎への負担
反対咬合により、歯が不自然な方向に力を受けやすく、歯のすり減りや歯周病のリスクが高まることがあります。
受け口の治療方法
叢生の治療には、歯列のスペース確保と、正しい位置への移動が必要です。患者様の年齢や歯並びの状態に応じて、以下のような方法を提案しています。
成人の方の治療法
成人の方の矯正治療は、顎の発育がすでに完了しているため、基本的には顎の位置関係を変えることはできず、歯を個別に動かしてかみ合わせと見た目の改善を行います。
軽度の下顎前突の場合は、歯を抜かずに前歯の傾きをコントロールして改善することが可能です。中等度〜重度の場合は、上下の歯の位置関係を整えるために小臼歯の抜歯を行い、スペースを確保したうえで前歯を後方に移動させ、より良い咬み合わせを作ります。
ワイヤー矯正は全ての症例に対応可能で、表側または裏側(舌側)矯正装置から選択していただけます。固定式の装置を使用し、月に1回程度ワイヤーを調整しながら歯を動かします。マウスピース型矯正装置は軽度〜中等度の下顎前突に対応可能で、取り外しができるタイプです。1週間から10日ごとにマウスピースを交換しながら、歯の位置を少しずつ改善していきます。前歯を適切に後退させたり、奥歯の位置を安定させたりするために、歯科矯正用アンカースクリューを併用することもあります。これにより、歯を効率的かつ確実に動かすことができます。
下顎前突の原因を精密検査で分析し、骨格的な特徴に合わせた治療方針を立てることが大切です。顎の骨格的なズレが大きく顎変形症と診断された場合には、外科的矯正治療(手術を伴う矯正)が必要になることもあります。
POINT
当院では、患者様一人ひとりのライフスタイルやご希望を丁寧に伺い、納得して治療を進めていただけるよう、最適な治療プランをご提案します。
小児の方の治療法
小児の方の矯正治療では、顎の発育を利用して顎の前後的なバランスを整えることを目的に行います。顎の成長をコントロールできる時期に適切な治療を行うことで、将来的な外科的治療の必要性を減らすことが期待できます。
取り外し式の装置を夜間と就寝時(1日12時間以上)使用し、下顎の過剰な成長を抑えたり、上顎の成長を促したりしてバランスを整えます。症状の原因によって、使用する装置や治療方法は異なります。歯の大きさや生えるスペースに問題がある場合には、将来的に歯列を整えるために永久歯の抜歯を提案させていただくこともあります。
顎の位置関係が改善した後は、ワイヤー装置やマウスピース型矯正装置を用いて歯の位置を細かく整え、上下の歯が正しく咬み合うように仕上げていきます。
下顎前突の小児矯正は、お子様の成長が終了する15歳ごろまでを目安に行います。成長力を最大限に利用できるため、成人に比べて治療後の安定性が高く、痛みも少ないのが特徴です。
POINT
当院では、お子様と保護者の方が安心して治療を続けられるよう、日常生活での装置の使い方やモチベーション維持も丁寧にサポートいたします。
まとめ
受け口(下顎前突)は、見た目だけでなく、かみ合わせ・発音・顎関節・全身バランスにまで影響を与える症状です。お子様の場合は特に、成長期のうちに適切な治療を受けることで、将来の負担を大きく軽減できます。
「下の歯が前に出ている」「子どもの歯並びが心配」「発音が気になる」といったお悩みがある方は、ぜひ一度当院までご相談ください。お一人おひとりに合った治療方法を矯正治療専門医院でご提案いたします。